掛率とは?計算方法と、食品ECで「7掛」が利益を残せない理由

掛率とは|下代÷上代×100の計算と食品ECの粗利構造

掛率(かけりつ)とは、上代(売価)に対する下代(仕入値)の割合のことです。計算式は「下代 ÷ 上代 × 100」。7掛なら売価の70%が仕入値、残り30%が粗利の原資になります。

ただし食品ECでは、この「残り30%」からモール手数料・送料・広告費・販促費がすべて出ていきます。卸の感覚で7掛のまま売価を決めると、売れば売るほど赤字になる構造が生まれます。この記事では、掛率の計算方法を整理したうえで、食品EC事業者が掛率から売価を逆算する手順までを扱います。

掛率とは|定義と計算式

掛率は流通の現場で使われる価格用語で、上代に対して下代が何%を占めるかを表します。

  • 上代(じょうだい)=メーカー希望小売価格・販売価格
  • 下代(げだい)=卸値・仕入値

計算式は次のとおりです。

  • 掛率(%)= 下代 ÷ 上代 × 100
  • 下代 = 上代 × 掛率
  • 上代 = 下代 ÷ 掛率

たとえば上代1,000円・下代700円なら、700 ÷ 1,000 × 100 = 70%(7掛)。口語では「ナナガケ」「シチガケ」と読みます。

「掛率が低い」=買う側が有利

掛率は数字が小さいほど仕入側の取り分が大きくなります。5掛(50%)は売価の半分で仕入れられる状態、8掛(80%)は売価の8割を払って仕入れる状態です。交渉の場で「もう少し掛率を下げてほしい」と言われたら、それは値引き要請と同義です。

掛率・原価率・粗利率・値入率の違い

現場で混同されやすい4つを整理します。

用語 計算式 視点
掛率 下代 ÷ 上代 卸す側から見た価格比率
仕入原価率 仕入値 ÷ 売価 仕入れる側から見た同じ比率
粗利率 粗利 ÷ 売上 実際に残った利益の割合
値入率 (想定売価 − 仕入値)÷ 想定売価 販売前の「想定」の利益率

重要なのは値入率と粗利率が一致しないことです。値入率はあくまで販売前の計画値で、値引き・クーポン・廃棄・返品が発生すれば、実際の粗利率はそれより下がります。食品はとくに賞味期限があるため、廃棄・見切り販売の分だけ想定と実績の差が開きやすいカテゴリです。

業界別の掛率相場|食品は7掛前後

掛率の相場は業界によって大きく異なります。流通業界で一般に語られる目安は次のとおりです。

業界 掛率の目安
食品 約70%
飲食(食材仕入れ) 約40%
アパレル・玩具 約50〜60%
化粧品 約35〜55%
日用雑貨 約20〜30%

食品の掛率が他業界より高い(=仕入側の取り分が薄い)のは、賞味期限による在庫リスクをメーカー側が負いにくく、回転で稼ぐ構造になっているためです。アパレルの感覚で「5掛が普通」と考えると、食品では話が合いません。

食品ECで掛率をそのまま使うと危ない3つの理由

卸取引の掛率は「商品が相手に渡るまで」のコストしか織り込んでいません。自社でECを運営する場合、7掛で残る30%からさらに次の費用が差し引かれます。

理由1|モール手数料が売価に対してかかる

モール手数料は原価ではなく売価に対してかかります。たとえばAmazonの食品&飲料カテゴリーの販売手数料は、Amazon公式の料金ページによると商品価格に応じて次のように分かれます(2026年9月時点)。

  • 750円以下:5%
  • 750円超〜1,500円以下:8.4%
  • 1,500円超:10.4%

加えて最低販売手数料30円、大口出品の月額登録料4,900円(税抜)がかかります。楽天市場は「月額出店料+システム利用料+楽天ポイント原資+アフィリエイト手数料」といった費目が積み上がる構造で、出店プランによって料率が変わります。TikTok Shopは食品カテゴリの手数料率が7%です(2026年改定後)。

つまり売価の5〜15%前後は、商品が売れた瞬間に自動的に消えます。

理由2|送料とクール便が粗利を食い潰す

食品ECで最も粗利を削るのは送料です。とくに冷凍・冷蔵はクール便料金が上乗せされるため、常温商品と同じ売価設計では成立しません。楽天市場の送料無料ライン3,980円(税込)のように、モール側の仕様が実質的な価格下限を決めている場合もあります。

送料を「商品代金に内包する」か「別途請求する」かで、同じ掛率でも手元に残る額はまったく変わります。楽天の送料無料ライン3,980円と「送料負け」しない設計も併せて確認してください。

理由3|広告費・販促費が「変動費」として乗る

ECでは露出を買わなければ売れません。楽天RPP、Amazonスポンサープロダクト、Yahoo!のアイテムマッチ、TikTok ShopのGMV Maxはいずれも売価に対して一定割合のコストとして効いてきます。クーポンやポイント原資も同様です。

この広告費を「掛率の外側」で考えていると、決算になってはじめて営業利益が消えていたことに気づきます。

検算してみる|7掛の商品は食品ECでいくら残るか

上代3,000円・下代2,100円(7掛)の冷凍商品を、自社でモール販売するケースで計算します。

項目 金額 計算根拠
売価 3,000円
仕入原価 ▲2,100円 7掛
モール手数料 ▲300円 売価の10%と仮定
決済手数料 ▲60円 売価の2%と仮定
送料(クール便) ▲900円 店舗負担と仮定
梱包・資材 ▲80円
残り ▲440円 広告費を使う前の時点で赤字

広告費を1円も使っていない段階で赤字です。7掛は「卸としては妥当」でも、「自社EC・冷凍・送料店舗負担」の条件では成立しません。この商品を黒字にするには、掛率を下げる(原価交渉・内製化)、売価を上げる、複数個セットにして送料を希釈する、常温便に切り替える、のいずれかが必要になります。

自社の条件で同じ計算をしたい場合は、食品EC 利益シミュレーターに原価・送料・手数料・広告費を入れて確認できます。

掛率から売価を逆算する手順

「原価に何%乗せるか」ではなく、「最後にいくら残したいか」から逆算するのが正しい順序です。

  1. 目標粗利率を決める:食品ECでは送料込みで25〜35%を目標に置くのが現実的なラインです。
  2. 売価に比例して出ていくコストを足す:モール手数料+決済手数料+アフィリエイト/広告費の合計比率を出します(仮に18%)。
  3. 固定的に出ていく金額を足す:送料+梱包資材+同梱物(仮に980円)。
  4. 売価を解く:売価 =(原価 + 固定費)÷(1 − 比率コスト − 目標粗利率)

上の例(原価2,100円・固定費980円・比率コスト18%・目標粗利率25%)なら、売価 = 3,080 ÷ 0.57 = 約5,400円。ここで「5,400円で売れるのか」という問いに戻り、売れないなら原価か商品設計そのものを見直す、という判断になります。

当社が運用で確認している挙動

当社が食品EC店舗の運用で確認している範囲では、送料込みの粗利率が25〜35%を下回る商品は、広告を回した時点で営業利益が残らないケースがほとんどです(2026年9月時点。商材・配送形態・モールにより差があります)。また、単品よりも複数個セット・詰め合わせのほうが固定費(送料・梱包)を希釈できるため、同じ掛率でも粗利率が改善します。この挙動は当社の運用実績に基づくもので、公的な統計で検証されたものではありません。自社の数値で必ず検算してください。

食品ECの市場前提も押さえておく

経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」(2025年8月公表・2024年実績)によると、物販系分野のBtoC-EC市場規模は15兆2,194億円、EC化率は9.78%。このうち食品・飲料・酒類は市場規模3兆1,163億円(前年比6.36%増)と物販系で最大カテゴリでありながら、EC化率は4.52%にとどまります。

伸びしろは大きい一方で、EC化率が低いのは「送料と鮮度の制約で利益が出しにくい」という構造的な理由があるためです。掛率と売価の設計は、この構造に正面から向き合う作業になります。

よくある質問

掛率と原価率は同じ意味ですか?

計算式は同じです。卸す側の視点で言うときを「掛率」、仕入れる側の視点で言うときを「仕入原価率」と呼び分けるのが一般的です。数値そのものは同一になります。

食品の掛率の相場は何掛ですか?

一般に流通業界で語られる食品の掛率の目安は約70%(7掛)です。ただし商品カテゴリ・取引量・PB/NBの別・物流条件によって実際の水準は変わるため、相場はあくまで交渉の出発点として扱ってください。

掛率を下げてもらうにはどう交渉すればよいですか?

単純な値引き要請ではなく、相手側のコストが下がる条件とセットで提示するのが基本です。発注ロットの拡大、発注頻度の集約、支払いサイトの短縮、在庫リスクの引き受け、販促協力などが交渉材料になります。

掛率から売価を決めるとき、送料はどう扱えばよいですか?

送料は売価に比例しない固定費なので、比率ではなく金額として先に差し引いてください。とくに冷凍・冷蔵はクール便料金が上乗せされるため、常温と同じ計算式を使うと粗利を大きく読み違えます。

モール手数料は掛率の計算に含めるべきですか?

掛率の計算式そのものには含めません。掛率はあくまで上代と下代の比率です。ただし売価を決めるときは、モール手数料・決済手数料・アフィリエイト費用を売価に対する比率コストとして別途織り込む必要があります。

値入率どおりの粗利が出ないのはなぜですか?

値入率は販売前の想定値だからです。クーポン・セール・ポイント原資による実質値引き、賞味期限切れによる廃棄や見切り販売、返品が発生すると、実績の粗利率は値入率を下回ります。食品は期限管理がある分、この乖離が出やすいカテゴリです。

まとめ

  • 掛率 = 下代 ÷ 上代 × 100。7掛なら売価の70%が仕入値。
  • 食品の掛率相場は約70%で、アパレル等より仕入側の取り分が薄い。
  • 食品ECでは残り30%からモール手数料・送料・広告費が出ていくため、掛率だけで売価を決めると赤字になる。
  • 「原価に乗せる」ではなく「最後にいくら残すか」から売価を逆算する。
  • 送料込み粗利率25〜35%を目標ラインに置き、自社の数値で必ず検算する。

掛率・原価・送料・手数料をモール横断で整理し直したい場合は、EC運営代行・コンサルティングで店舗ごとの利益構造から設計しています。支援範囲によって内容が変わるため、費用は個別見積りとなります。

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出典

※プラットフォームの手数料・仕様は改定されます。実際の料率は各モールの公式情報を必ずご確認ください。

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