結論
楽天市場の送料無料ライン(共通の送料込みライン)は、同一ショップの同一注文で3,980円(税込)以上、沖縄・離島など一部地域は9,800円(税込)以上が条件です。対応ショップではこのしきい値を超えた注文から送料を受け取ることができません。つまり送料無料ラインは「送料を無料にできる制度」ではなく、送料を取れなくなる金額を店舗側が把握しておくための線です。
食品、とくに冷凍・冷蔵・重量物を扱う店舗で起きる事故は、ほぼ1つに集約されます。3,980円ちょうどで買われると粗利が消える。クール便の実送料とモール手数料とクーポンを重ねると、しきい値ちょうどのカートが最も薄くなるためです。
やるべきことは、しきい値を動かすことではなく、しきい値ちょうどで買われない商品構成を作ること。この記事では仕様を公式情報で確認したうえで、自分で検算できる損益計算と、食品店舗が取れる設計の型を整理します。
まず仕様を正確に確認する
楽天市場のヘルプで公開されている条件は次のとおりです。
- 基準金額:対応ショップ内の同一注文で購入合計金額が3,980円(税込)以上。沖縄・離島・一部地域への配送は9,800円(税込)以上。
- 合算の範囲:複数ショップの合計では対象になりません。同一ショップ・同一注文であることが必須です。
- 判定タイミング:ポイント・クーポンを適用する前の金額で判定されます。
- 対象の配送方法:宅配便、小型宅配便、メール便、追跡可能メール便、コンビニ受取、ロッカー受取、店頭受取、郵便局受取。
- 対象外の配送方法:国際配送(EMS・FedEx含む)、当日配送、発送を伴わないサービス。
- 特定送料:「特定送料」と表示される商品は、いかなる場合も送料無料にならず、店舗が設定した送料がかかります。
- 単品配送商品:その商品単体で3,980円以上であれば送料無料。他の商品との合算はできません。
- その他の対象外:送料無料ライン対応外ショップの商品、お酒類、本・CD、発送元が沖縄・離島・一部地域の商品など。
ポイント・クーポン適用前の金額で判定される点は、セール設計に直接効きます。4,200円の商品に10%クーポンを重ねて実売3,780円になっても、送料無料ラインは成立したままです。つまり値引き後の入金額で送料を回収する設計にはできません。
クール便・大型便の扱いは「店舗設定」で決まる
楽天のヘルプでは、クール便・大型便はショップにより対象・非対象が異なるとされています。商品ページに「クール便」「大型便」と表示される場合があり、購入者側は店舗の会社概要ページで確認することになります。
店舗側の運用としては、39ショップ(送料無料ライン対応ショップ)であっても、クール便・クール冷凍便・大型宅配便については個別に送料を設定できる余地があります。一方で、それ以外の通常配送については、しきい値を超えた注文から送料を受け取ることはできません。しきい値を超える注文に対して送料を請求したい場合は、39ショップの適用対象外申請が必要になります(当社が運用で確認している取り扱い/2026年9月時点。申請可否と手続きは楽天の店舗運営Naviで必ず最新情報を確認してください)。
もう1つ見落としが多いのが、2020年以降に出店した店舗のデフォルト設定です。新規出店時点で送料無料ラインが適用された状態になっているケースがあり、クール便についても適用対象になっていることがあります。商品ページに「送料無料ライン対象外」の表示が出ていれば個別設定が効いている状態です。まず自社がどちらの状態かを確認してください。
「3,980円ちょうど」で粗利がどうなるかを検算する
仮の数値で計算します。数値はすべて例であり、自社の実数に置き換えて検算してください。
冷凍セット商品、売価3,980円(税込)。
- 原価率40% = 1,592円
- モール手数料等を合計10%と置く = 398円
- 梱包資材 = 100円
- 冷凍クール便の実送料を1,200円と置く = 1,200円
3,980 − 1,592 − 398 − 100 − 1,200 = 690円(粗利率17.3%)
ここに10%クーポン(398円)を重ねると292円。ピッキングと梱包の人件費を1件200円と置けば、残るのは92円です。売れば売るほど忙しくなるだけ、という状態がここで発生します。
同じ原価率・同じ送料で、売価を6,000円にするとどうなるか。
6,000 − 2,400(原価40%) − 600(手数料10%) − 100 − 1,200 = 1,700円(粗利率28.3%)
送料が固定費として乗る以上、客単価が上がるほど送料の負担率は下がります。食品ECの価格設計が「安くする」ではなく「まとめてもらう」に向かうのは、この構造によります。
食品店舗が取れる設計の型
1. 単品価格を3,980円付近に置かない
もっとも避けるべきなのは、主力単品の価格が3,980円をわずかに超える設計です。1点で成立してしまうため、客単価がしきい値に張り付きます。単品は2,000円台に置き、2点で4,000円台後半に乗る構成にすると、同じ送料で粗利が厚くなります。
2. まとめ買い・同梱を前提に組む
容量違い(1kg/2kg)、種類違いのセット、組み合わせ自由の選べるセットは、いずれも客単価をしきい値の上に押し上げるための設計です。当社の運用では、選べるレンジを用意した商品のほうがまとめ買いにつながりやすい傾向があります(2026年9月時点/社内の観測)。
3. 重量物・大型品は特定送料と単品配送を使い分ける
「特定送料」はいかなる場合も送料無料にならない設定、「単品配送」は他商品と合算できずその商品単体で判定される設定です。米や大容量冷凍品のように配送コストが突出する商材は、通常商品と同じ扱いにしないほうが安全です。設定の可否と方法はRMSの仕様に従います。
4. クール便を「対象外にする」か「価格に内包する」かを先に決める
クール便を送料無料ラインの対象外にすれば送料は回収できますが、購入者から見れば同じジャンルの競合より実質価格が高く見えます。逆に価格へ内包すれば表示価格は上がりますが、カート内での離脱要因は減ります。どちらが正解かは商材とジャンルの競合状況で変わるため、先に決めて全商品で統一することが重要です。商品ごとにばらつくと、同梱の判定が読めなくなります。
5. 39ショップから外れる判断は、検索露出とセットで考える
適用対象外申請を出せば送料は取れますが、楽天市場の検索結果には「送料無料」「送料無料ライン」の絞り込みがあり、そこから外れる副作用があります。露出面の考え方は楽天SEO対策の実務で整理しています。送料の回収額と、絞り込みから外れることで失う流入を並べて判断してください。
よくある質問
楽天の送料無料ラインはいくらですか?
対応ショップ内の同一注文で3,980円(税込)以上です。沖縄・離島・一部地域への配送は9,800円(税込)以上が条件になります。複数ショップの合計では対象になりません。
クーポンを使って3,980円を下回ったら送料はかかりますか?
かかりません。判定はポイント・クーポンを適用する前の金額で行われます。したがって値引き後の入金額で送料を回収する設計はできません。セール設計では、値引き前の金額がしきい値を超えるかどうかで考えてください。
クール便・冷凍便も送料無料ラインの対象になりますか?
ショップにより異なります。楽天のヘルプでもクール便・大型便は店舗ごとに対象・非対象が分かれるとされています。2020年以降に出店した店舗ではクール便も適用対象になっている場合があるため、まず自社の現在の設定を確認してください。
しきい値を超えた注文から送料を受け取ることはできますか?
送料無料ライン対応ショップでは受け取れません。受け取る必要がある場合は適用対象外申請が必要になります。ただし検索結果の「送料無料」絞り込みから外れる影響があるため、送料の回収額と流入の減少を並べて判断してください。手続きと可否は楽天の店舗運営Naviで確認が必要です。
特定送料と単品配送は何が違いますか?
特定送料は、いかなる場合も送料無料にならず店舗設定の送料がかかる商品です。単品配送は、他の商品と合算できず、その商品単体で3,980円以上かどうかで判定される商品です。重量物や大型品はこの2つを使い分けることで、通常商品の設計を崩さずに配送コストを吸収できます。
送料無料ラインに合わせて価格を上げるべきですか?
単品価格をしきい値ぎりぎりに寄せるのは避けたほうが安全です。1点で成立してしまうため客単価がしきい値に張り付き、クール便の実送料を差し引くと粗利が薄くなります。単品を下げ、まとめ買いでしきい値の上に乗せる構成のほうが、同じ送料で粗利が残ります。
まとめ
送料無料ラインは3,980円(沖縄・離島などは9,800円)。同一ショップ・同一注文が条件で、判定はポイント・クーポン適用前の金額で行われます。クール便・大型便の扱いは店舗設定により分かれ、特定送料と単品配送という例外設定も用意されています。
食品店舗にとっての本質は、しきい値そのものではなくしきい値ちょうどのカートが最も薄いという点です。売価3,980円・原価率40%・クール便1,200円で計算すれば、クーポンを重ねた時点で残るのは数百円になります。単品価格をしきい値付近に置かず、まとめ買いで上に乗せる。重量物は特定送料と単品配送で切り分ける。クール便の扱いは全商品で統一する。この3つで、同じ送料条件のまま粗利率は変わります。
楽天を含むモール横断の運用設計は食品EC特化型EC運営代行、TikTok Shopの立ち上げはTikTok Shop支援で扱っています。
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出典
- 楽天市場 送料無料ラインガイド(楽天グループ株式会社)|3,980円/沖縄・離島9,800円、対象外商品
- 【送料無料ライン/39ショップ】よくあるご質問(楽天市場ヘルプ)|同一ショップ同一注文、ポイント・クーポン適用前の金額で判定、対象/対象外の配送方法、クール便・大型便は店舗により異なること、特定送料、単品配送
- 楽天 RMS 店舗運営Navi|送料無料ラインの適用対象外申請(出店店舗向けマニュアル。手続き・可否は店舗運営Naviの最新ページをご確認ください)
本記事の計算例に用いた原価率・手数料率・クール便送料・人件費はすべて仮の数値です。実際の損益は自社の実数で検算してください。また、送料無料ラインの設定可否、適用対象外申請の手続き、特定送料・単品配送の仕様は改定されることがあるため、実務では必ずRMSの店舗運営Naviおよび楽天の最新のガイドラインをご確認ください。





