食品のネット販売に必要な許可・届出|食品衛生法の3分岐と、特商法で落ちやすい表示

食品のネット販売に必要な営業許可・営業届出の申請書類と、冷凍・冷蔵の温度管理を表すイメージイラスト

結論

食品をネットで売るときに必要な手続きは、「何を扱うか」ではなく「自社が製造・加工・保管に関与するか」で決まります。自社で製造・加工するなら食品衛生法の営業許可(32業種)または営業届出が必要で、常温で保存できる包装済み食品をそのまま販売するだけなら届出も不要です。2021年6月1日施行の改正食品衛生法で、この線引きが整理されました。

もうひとつ、多くの店舗が逆に理解しているのが表示です。商品ページ上の食品表示は、食品表示基準の対象外です(=法律上の義務ではありません)。一方で特定商取引法にもとづく広告表示は義務です。この2つを混同すると、義務のない項目に労力を割きながら、義務のある項目を落とすという最悪の組み合わせになります。本記事は手続き(許可・届出・免許)と、義務である特商法の表示に絞ります。義務ではない食品表示情報を商品ページにどう載せるかは食品ECの商品ページと食品表示|法律上は義務外。それでも載せるべき3項目を参照してください。

まず整理:許可・届出・不要の3分岐

2021年6月1日施行の改正食品衛生法により、営業許可の対象業種は従来の34業種から実態に合わせて32業種に再編され、許可対象外の事業者には営業届出が義務づけられました。あわせて、原則としてすべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が求められています(小規模営業者等は取り扱う食品の特性に応じた簡略化が認められています)。

ネット販売という販売形態そのものに、専用の許可制度はありません。判断はあくまで自社が食品にどう関与するかです。

営業許可が必要になる代表例(32業種に該当する場合)

  • 自社の厨房・工場で調理・製造・加工して売る(菓子製造業、そうざい製造業、食肉製品製造業など)
  • 仕入れた原料を小分け・詰め替えして包装する形態で、該当業種にあたる場合
  • 温度管理が必要な包装食品の販売業、冷凍・冷蔵倉庫業

営業届出で足りる例

  • 許可対象の32業種に該当しないが、食品の販売・保管・運搬などを事業として行う場合

届出も不要な例

  • 常温で保存可能な包装食品のみの販売(メーカーが包装済みの常温品を、そのまま転売するだけの形態)

注意点として、「冷凍・冷蔵が必要な包装食品を扱う」に切り替わった時点で扱いが変わります。常温の菓子を売っていた店舗が冷凍の惣菜を追加する、というのは手続き上の分岐を越える変更です。冷凍食品を新たに扱い始めるときは、この点を先に確認してください。冷凍に固有の論点(クール便の仕様と送料設計)は冷凍食品のネット販売|必要な許可とクール便の送料、「送料負け」しない価格設計にまとめています。

業種の該当判断は最終的に管轄の保健所が行います。同じ商品でも工程の持ち方で結論が変わるため、事業計画の段階で保健所に相談するのが最短です。厚生労働省の資料および自治体(保健所)の案内で、必ず最新の区分を確認してください。

食品衛生責任者とHACCP:許可・届出のどちらでも必要になる

営業許可・営業届出のいずれの場合も、施設ごとに食品衛生責任者を置くことが求められます。調理師・製菓衛生師などの資格保有者、または各都道府県の食品衛生協会等が実施する養成講習会の受講者が該当します。

HACCPについては「認証を取る」制度ではなく、衛生管理計画をつくり、記録し、実行するという運用の話です。小規模事業者は業界団体が作成した手引書に沿った簡略化されたアプローチが認められています。ネット販売を始めるにあたって新たに設備投資が必要になるわけではありませんが、記録が残っていないと保健所の立入時に問題になります。

酒類を扱うなら、別の免許が必要

食品と同じ感覚で酒類をネット販売することはできません。通信販売で酒類を販売するには、通信販売酒類小売業免許(管轄の税務署)が必要です。一般の酒販免許とは別枠で、扱える品目にも制限があります。酒を含むギフトセットを組む場合も対象になるため、企画段階で税務署に確認してください。

商品ページの食品表示は「義務ではない」

ここが最も誤解されている点です。消費者庁が2022年6月に公表した「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブック」は、食品表示基準においてECサイト上の食品表示情報の掲載は対象外であると明記しています。つまり商品ページにアレルゲンや賞味期限を書くことは、食品表示法上の義務ではありません。

では書かなくてよいのか。答えは逆です。同ガイドブックは、義務ではないという前提のうえで、アレルゲン情報・期限情報・保存方法・原材料関連・栄養成分などについて、事業者が提供を検討すべき内容と方法を具体的に示しています。優先して載せるべき項目、期限情報の書き方、情報の最新性の担保については食品ECの商品ページと食品表示|法律上は義務外。それでも載せるべき3項目で詳しく扱っているため、本記事では手続きと義務表示のほうに進みます。

一方で、特定商取引法の広告表示は義務

ネット販売は特定商取引法の「通信販売」にあたります。広告(=商品ページや店舗ページ)に表示すべき事項は法律で定められており、こちらは義務です。消費者庁の特定商取引法ガイドが示す表示事項は次のとおりです。

  1. 販売価格(役務の対価)
  2. 送料
  3. 販売価格・送料以外に購入者が負担する金銭の内容と額
  4. 代金の支払時期および支払方法
  5. 商品の引渡時期(権利の移転時期、役務の提供時期)
  6. 契約申込みの期間に関する定めがあるときは、その旨と内容
  7. 申込みの撤回・契約の解除に関する事項(返品特約を含む)
  8. 商品が契約内容に適合しない場合の販売業者の責任について特約がある場合は、その内容
  9. 事業者の氏名(名称)、住所、電話番号
  10. 法人が電子情報処理組織を使用する場合の代表者または責任者の氏名
  11. ソフトウェア取引の場合の動作環境

送料については、広告スペースが不足している場合に限り、最高・最低送料、平均送料、または数例の表示で足りるとされています。

食品で実務的に落ちやすいのは7の返品特約です。生鮮・冷凍食品は「お客様都合による返品は受け付けない」とする店舗が多いですが、その旨を表示していなければ特約は成立しません。返品を受けない方針なら、必ず明記してください。

景品表示法:食品でとくに危ないのは2か所

許可・表示の次に来るのが訴求表現です。食品ECで問題になりやすいのは価格表示と効能表現の2点です。

二重価格表示

セール価格の横に通常価格を並べる場合、その通常価格は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でなければなりません。消費者庁の価格表示ガイドラインは、セール開始時点からさかのぼる8週間を検討対象とする基準を示しています。具体的な線引きと、食品ECで事故になりやすいパターンは食品ECの二重価格表示|「4,980円→2,490円」が景表法に触れる線引きと8週間ルールにまとめています。

効能効果の標榜

一般の食品で「効く」「改善する」「治る」に近い表現を使うと薬機法に触れます。機能性表示食品・特定保健用食品でない商品については、表現を工程でチェックする体制が必要です。

ステマ規制(景品表示法上の指定告示)については、インフルエンサーやアフィリエイターを使う場合に別途の判断が必要です。詳細はステマ規制とインフルエンサー施策|食品ECで「PR表記」を落とさないための判断基準で整理しています。

出店前チェックリスト

  1. 自社が製造・加工・小分けに関与するか整理し、管轄保健所に業種の該当を確認する
  2. 許可または届出の手続きを行い、食品衛生責任者を設置する
  3. HACCPに沿った衛生管理計画を作成し、記録の運用を始める
  4. 酒類を扱うなら通信販売酒類小売業免許を税務署に確認・申請する
  5. 特定商取引法の表示事項を、店舗ページと商品ページに漏れなく載せる
  6. 返品特約を明記する(受け付けない方針なら、その旨を表示する)
  7. アレルゲン・期限(期限残表示)・保存方法(冷凍/冷蔵/常温)を、テキストで上段に置く
  8. 価格表示と効能表現を、景品表示法・薬機法の観点でチェックする

1〜4は事業者としての適法性、5〜6は義務、7は義務ではないが売上とクレームに直結する部分、8は炎上・措置命令のリスク管理です。優先順位はこの順で動かしません。

よくある質問

食品のネット販売に許可は必要ですか?

ネット販売という形態自体に専用の許可はありません。判断は自社が食品にどう関与するかで決まります。自社で製造・加工するなら食品衛生法の営業許可(32業種)または営業届出が必要です。常温で保存可能な包装食品のみをそのまま販売する場合は、届出も不要とされています。業種の該当判断は管轄の保健所が行うため、事業計画の段階で相談してください。

食品のネット販売に資格は必要ですか?

営業許可・営業届出のいずれの場合も、施設ごとに食品衛生責任者を置くことが求められます。調理師・製菓衛生師などの資格保有者、または都道府県の食品衛生協会等が実施する養成講習会の受講者が該当します。販売者個人に別途の国家資格が求められるわけではありません。

商品ページにアレルギー表示や賞味期限を載せる義務はありますか?

食品表示基準においてECサイト上の食品表示情報の掲載は対象外とされており、法律上の義務ではありません。ただし消費者庁は2022年6月のガイドブックで、アレルゲン・期限情報・保存方法などの提供方法を具体的に示しています。義務ではないものの、クレームと返品を減らす実務上の必須項目と捉えるのが妥当です。

特定商取引法にもとづく表示は何を載せればよいですか?

販売価格、送料、その他の購入者負担金銭、支払時期・方法、引渡時期、申込期間の定めがある場合はその内容、申込みの撤回・解除に関する事項(返品特約を含む)、契約不適合責任の特約、事業者の氏名・住所・電話番号、法人の代表者または責任者の氏名などが表示事項として定められています。こちらは義務です。

「お客様都合の返品は不可」としたい場合はどうすればよいですか?

その旨を広告に表示してください。返品特約は表示していなければ成立しません。生鮮・冷凍食品で返品を受け付けない方針であっても、表示がないと購入者側の申込み撤回を拒めない可能性があります。

冷凍食品を新しく扱う場合、手続きは変わりますか?

変わる可能性があります。「常温で保存可能な包装食品のみの販売」は届出不要とされている一方、温度管理が必要な包装食品の販売業は許可対象の32業種に含まれます。常温品だけを扱っていた店舗が冷凍品を追加するのは手続き上の分岐を越える変更にあたるため、扱い始める前に保健所に確認してください。

まとめ

食品のネット販売で必要な手続きは、扱う商品のジャンルではなく、自社が製造・加工・温度管理にどう関与するかで決まります。2021年6月施行の改正食品衛生法で、許可(32業種)・届出・不要の3分岐とHACCPの原則義務化が整理されました。

表示については、商品ページ上の食品表示は食品表示基準の対象外で義務ではなく、特定商取引法の広告表示は義務、という非対称を正確に理解することが要点です。義務ではない食品表示情報こそが購入判断とクレーム率を左右し、義務である返品特約こそが落ちやすい。この2つを取り違えないだけで、立ち上げ時のリスクはかなり下がります。

モールごとの立ち上げ実務は食品ECモールの選び方、TikTok Shopへの出店はTikTok Shopの出店方法|必要書類と審査、食品事業者だけに求められる要件で扱っています。出店から運用までの体制づくりは食品EC特化型EC運営代行をご覧ください。

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出典

本記事は2026年9月時点の公開情報にもとづく整理です。営業許可の業種該当・届出の要否は管轄の保健所が判断します。酒類の通信販売は管轄の税務署にご確認ください。法令・ガイドラインは改正されることがあるため、実際の手続きは必ず所管官庁および自治体の最新情報で確認してください。個別の法的判断については専門家にご相談ください。

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