ショート動画マーケティングを食品ECの売上に変える|縦型2,049億円時代の設計

食品ECにおけるショート動画マーケティング。縦型動画の再生画面と売上が伸びるグラフのイメージイラスト

結論

ショート動画マーケティングを「バズを狙う施策」として設計すると、食品ECではほぼ回収できません。縦型動画広告は2025年に2,049億円(前年比155.9%)まで伸び、スマートフォン向け動画広告の29.1%を占めるまでになりました。市場が伸びているのは事実ですが、伸びているのは広告としての縦型動画であって、再生数そのものではありません。

食品で成果を出している動画には共通の型があります。(1)お得感と物量、(2)断面とストーリー、(3)時短・アレンジ、(4)悩み起点、(5)製造工程の5パターンです。そして評価指標は再生数ではなく、CTR・CVR・1本あたり売上に置き換える。この2点を先に決めてから制作に入るかどうかで、同じ本数でも結果が変わります。

市場の数字:伸びているのは「縦型」であって「動画」ではない

サイバーエージェントがデジタルインファクトと共同で実施した2025年の国内動画広告市場調査(調査時期2025年11月〜2026年1月)によると、市場規模は次のとおりです。

区分 2025年 前年比 2029年予測
動画広告市場 全体 8,855億円 122.2% 1兆6,336億円
スマートフォン向け 7,053億円 122.7%
うち縦型動画広告 2,049億円 155.9% 5,648億円
コネクテッドテレビ 1,295億円 127.0%

読むべきは差分です。市場全体が122.2%で伸びるなか、縦型動画だけが155.9%。2029年には縦型がスマートフォン向けの42.5%を占めると予測されています。全体の伸びを大きく上回るということは、予算が横スライドしている——つまり他の動画枠から縦型へ移っているということです。

この移動が起きている理由は、縦型動画が「見るもの」から「買う場所」に変わったことにあると考えられます。TikTok Shopのように視聴と決済が同じ画面で完結する環境では、動画は広告であると同時に売り場です。ただし、この因果関係は公開データで直接示されているものではないため【推測】として扱ってください。

食品で成果が出ている動画の5パターン

当社がTikTok・TikTok Shopで食品カテゴリの動画を運用するなかで整理している、成果が出やすい構成の型です(2026年9月時点/当社の運用で確認している傾向)。

1. 福袋・バラエティ型:物量とお得感で判断を早くする

「◯個入りでこの価格」「何がどれだけ入っているか」を画面いっぱいに見せる型です。中身が見えることで、福袋特有の不安が消えます。まとめ買い・在庫消化・新商品のお試しを同時に担えるため、SKU設計の自由度が高いのが利点です。

公開事例では、UHA味覚糖が「夏の福袋2025」でTikTok Shopのプレ施策400個を6日で完売させ、本施策の1,000個を3日で完売、プレ施策から販売実績2.5倍という結果が報じられています。

2. スイーツ・ギフト型:断面とストーリー

カット断面の層、押して戻る弾力、産地や工場の背景。ギフト利用シーン(手土産・差し入れ・お中元)を明示すると、自宅用とギフト用でSKUを分けるアップセルが成立します。のし・メッセージカードの有無を動画内で示すだけで、遷移先の選択が減ります。

3. 時短・アレンジ型:レシピで複数商品を束ねる

「材料3つ」「5分で完成」「ワンパン」。冷凍・レトルト・調味料を格上げする演出が中心です。この型の強みは、1本の動画に複数商品を紐づけられることにあります。メイン食材+ソース+スパイスのように、客単価の設計が動画の構成そのものに組み込めます。

4. 悩み起点型:数字で語る

「疲れやすい」「罪悪感なく甘いものを食べたい」といった悩みの言語化から入り、「これだけでたんぱく質◯g」のように数字で示す型です。継続購入との相性がよく、定期便・サブスクの導線に乗せやすい。ただし食品での効能表現は薬機法・景品表示法の制約を受けます。原稿チェックを制作フローに組み込んでください。

5. 製造工程型:信頼と「見ていて気持ちいい」の両取り

大量調理ライン、連続カット、ソースが流れる俯瞰カット。衛生管理された工場が映ること自体が信頼の材料になり、BtoB・OEMの引き合いにもつながります。「この工場直送」という文脈は、安心感とお得感を同時に出せる数少ない型です。

制作より先に決めるべき3つのこと

指標を再生数から外す

動画クリエイターに再生数を目標として渡すと、商品が主役でない動画が増えます。評価軸はCTR(動画から商品ページへの遷移率)、CVR(遷移後の購入率)、1本あたり売上に置き換えてください。この3つなら、どこが詰まっているかを本数を重ねながら特定できます。再生数が高くCTRが低いなら訴求と商品がずれている。CTRが高くCVRが低いなら商品ページ側の問題です。

訴求は「1本1軸」に絞る

1本の動画に複数の訴求を詰めると、視聴者はどれも覚えません。時短なら時短、ギフトならギフトで切る。同じ商品でも軸を変えた別の動画を作るほうが、1本に詰め込むより結果が安定します(当社が運用で確認している傾向、2026年9月時点)。

本数を前提に設計する

ショート動画は1本の完成度より、どの型がその商品に当たるかを見つける速度で決まります。5つの型を横並びで試し、当たった型を厚くする。最初から1本に予算を寄せると、外れたときに学習が残りません。

ショート動画が向く商品/向かない商品

すべての食品がショート動画に向くわけではありません。判断は次の質問で足ります。

  • 画面で差が伝わるか:断面・湯気・とろみ・量。写真で伝わりにくいものほど動画の優位が出ます
  • その場で買える価格帯か:動画からの購入は比較検討を挟みません。高単価品は小容量SKUを別に用意するほうが通りやすい
  • 届いてからの体験が説明できるか:調理が必要な商品は、完成形を見せないと「食べ方がわからない」で離脱します
  • 在庫が伸びに耐えるか:伸びた直後に欠品すると、評価とアカウントの信頼が同時に落ちます

4つ目は軽視されがちですが、実務では最も痛い。拡散の設計段階で在庫の上限を確認してください。

法令チェックを工程に入れる

ショート動画は制作本数が多く、チェックが追いつかなくなりがちです。食品で最低限おさえるのは次の3点です。

  • 効能効果の標榜:一般食品で「効く」「改善する」「治る」に近い表現は薬機法に触れます
  • 根拠のない最上級表現:「No.1」「最安値」は根拠の提示が必要です(景品表示法)
  • PR表記:クリエイターに依頼して投稿してもらう場合、ステマ規制の対象になります

とくに3点目は、動画の本数が増えるほど抜けやすくなります。判断基準はステマ規制とインフルエンサー施策|食品ECで「PR表記」を落とさないための判断基準で整理しています。

ショート動画とライブ配信の役割分担

ショート動画とLIVEは代替関係ではなく、役割が違います。ショート動画はストックとして残り、検索・レコメンド経由で後から効く。LIVEはその場の同時接続に対して一気に売る。したがって、ショート動画で反応が取れた訴求をLIVEの台本に持ち込み、LIVEで売れた商品をショート動画で再生産する、という往復が基本形になります。

LIVE側の設計はTikTokライブコマースのやり方|3分ループで設計する進行と、配信中に見るべき5つの数値で扱っています。

よくある質問

ショート動画マーケティングは食品ECでも効果がありますか?

商品によります。断面・湯気・量など「画面で差が伝わる」商品ほど優位が出ます。一方で高単価のギフト商材は、動画からの即時購入と相性が悪いため、小容量SKUを別に用意するなどの設計が必要です。市場の側では、縦型動画広告が2025年に2,049億円・前年比155.9%と、動画広告全体(122.2%)を大きく上回る伸びを示しています。

再生数が伸びているのに売上につながりません。何を見ればよいですか?

CTR(動画から商品ページへの遷移率)とCVR(遷移後の購入率)を分けて見てください。再生数が高くCTRが低いなら、訴求と商品がずれています。CTRが高くCVRが低いなら、問題は動画ではなく商品ページ側です。再生数を目標指標にしていると、この切り分けができません。

1本の動画に何を入れるべきですか?

訴求は1本につき1軸に絞ってください。時短なら時短、ギフトならギフト。同じ商品でも軸を変えた別の動画を作るほうが、1本に複数の訴求を詰め込むより結果が安定します。これは当社が運用で確認している傾向です(2026年9月時点)。

どの型から試せばよいですか?

商品特性で決めます。中身の物量で見せられるなら福袋・バラエティ型、断面がきれいならスイーツ・ギフト型、調理が必要なら時短・アレンジ型、機能性があるなら悩み起点型、自社工場があれば製造工程型です。迷う場合は複数の型を横並びで試し、当たった型を厚くするほうが早く収束します。

ショート動画とライブ配信はどちらを先にやるべきですか?

ショート動画が先に向くケースが多いです。ショート動画はストックとして残り、後から検索・レコメンド経由で効きます。LIVEはその場の同時接続に依存するため、視聴者の母数がない状態では成立しにくい。ショート動画で反応の取れた訴求をLIVEの台本に持ち込むのが基本の順序です。

クリエイターに依頼する動画で、注意すべき法令は何ですか?

薬機法(効能効果の標榜)、景品表示法(根拠のない「No.1」「最安値」などの最上級表現、および二重価格表示)、そしてステマ規制にもとづくPR表記の3点です。制作本数が増えるほどチェックが抜けやすくなるため、公開前の確認を工程として固定してください。

まとめ

縦型動画広告は2025年に2,049億円・前年比155.9%と、動画広告市場全体の伸びを大きく上回りました。予算が他の動画枠から縦型へ移っているという意味で、食品ECにとって無視できない変化です。

ただし、伸びている市場に参入することと成果を出すことは別です。食品で機能しているのは、福袋・バラエティ/スイーツ・ギフト/時短・アレンジ/悩み起点/製造工程の5パターンで、いずれも「画面で差が伝わる」ことを前提にしています。そして評価は再生数ではなくCTR・CVR・1本あたり売上。訴求は1本1軸。この設計を先に固めてから制作に入ってください。

クリエイターを使った動画制作とTikTok Shopの運用はTikTok Shop支援、モール横断でのEC運用体制は食品EC特化型EC運営代行で扱っています。

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出典

本記事のうち、当社の運用で確認している傾向として記載した部分は、社内の運用知見にもとづく整理であり、プラットフォームが公開している指標ではありません(2026年9月時点)。TikTok Shopの仕様・規約は改定されることがあるため、実務では必ず公式の最新情報をご確認ください。

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