景品表示法の有利誤認とは|食品ECの「通常価格」「期間限定」表示で違反になる線引きと罰則

割引マークの付いた値札と注意の三角マークを表したイラスト

有利誤認表示とは、価格その他の取引条件について、実際のものや競争事業者のものより著しく有利だと一般消費者に誤認させる表示のこと(景品表示法5条2号)。食品ECでは「通常価格」「期間限定」「最大〇〇%OFF」「送料無料」といった割引表現が対象になりやすく、表示と実態がずれると違反を問われる可能性がある。

違反した場合は、措置命令に加えて、対象商品の売上額の3%を基準とする課徴金(2016年の制度導入時の解説にもとづく)、2024年10月施行の改正で優良誤認・有利誤認に新設された直罰規定(100万円以下の罰金)が関わる。この記事では、優良誤認との違い、食品ECで線引きが問われる表示パターン、課徴金の計算例、社内チェックの手順を整理する。

食品ECの運営代行・コンサルティング|ガストロ(GastroduceJapan)
監修者

若松 友貴

Gastroduce Japan株式会社 代表取締役社長

一橋大学商学部卒業後、2014年に楽天株式会社へ入社し、楽天市場ECコンサルタントとして累計1,000社超を担当。2017年に食品EC特化の実行型コンサルティング会社Gastroduce Japan株式会社を設立。現在はTikTok Shop公認パートナー(TSP)として60店舗以上を支援し、支援店舗群の月間流通総額は3.5億円を超える(2026年6月時点)。食品カテゴリー初のTikTok Shop「松屋フーズデー」の企画・運営や、「TikTok上半期トレンド大賞2026」ヒットアイテム部門受賞商品の支援を手がけ、2025年にはTikTok食品カテゴリ日商ランキング上位10商品のうち6商品を支援ブランドが占めた。日経MJ一面トップにも掲載。

有利誤認と優良誤認の違い

項目 優良誤認表示 有利誤認表示
条文 景品表示法5条1号 景品表示法5条2号
対象 商品・サービスの品質、規格その他の内容 商品・サービスの価格その他の取引条件
誤認させる内容 実際のものや競争事業者のものより著しく優良 実際のものや競争事業者のものより著しく有利
食品ECの例 原材料・産地・効果効能の表示 通常価格、割引率、期間限定、送料、付属品の表示

効果・性能に関する表示(優良誤認の疑いがあるもの)には不実証広告規制があり、消費者庁から求められた場合は合理的な根拠資料を提出する必要がある(提出期限は原則15日以内とされる)。

食品ECで有利誤認になり得る表示パターン

次の表示は、実態とずれると有利誤認と判断される可能性がある。個別の判断は、消費者庁の公表する価格表示の考え方などで確認してほしい。

  • 二重価格(「通常価格4,980円 → 2,490円」):比較対象の通常価格が、実際に販売されていた価格かどうか。目安となる期間の考え方は’+a(T[‘double-price-display-food-ec’].link,’食品ECの二重価格表示’)+’で扱っている
  • 「期間限定」「今だけ」:実際は同じ条件で常時販売していないか。期間を過ぎても同じ価格で売り続けていれば、限定の実態がない
  • 「最大〇〇%OFF」:その割引率が適用される商品が実際に存在するか。対象商品が1点だけで、ほとんどの商品が数%の割引なら、お客様の受け取り方とずれる
  • 「送料無料」:条件(購入金額、対象地域、クール便の扱い)が明記されているか。送料を商品価格に上乗せして「無料」と見せていないか
  • 「初回限定」「会員限定」:限定の条件を満たさない人にも同じ価格で販売していないか
  • メーカー希望小売価格との比較:希望小売価格が存在しないのに表示していないか。オープン価格の商品との関係は’+a(T[‘open-price-food-ec’].link,’オープン価格とは’)+’で整理している

違反するとどうなるか|課徴金の計算例

課徴金は、対象期間(最長3年)の対象商品の売上額に3%を掛けて計算する。算定した額が150万円未満の場合は納付命令の対象にならず、売上額に換算すると5,000万円未満が目安になる(2016年の制度導入時の解説にもとづく。現行の運用は消費者庁の公表情報で確認してほしい)。

対象期間の売上額(仮定) 課徴金の算定額(3%) 納付命令の対象
4,900万円 147万円 150万円未満のため対象外
1億円 300万円 対象
3億円 900万円 対象

このほか、2024年10月施行の改正景品表示法では、事業者が是正措置計画を自主的に作成して認定を受けると、措置命令や課徴金納付命令が適用されない確約手続が導入された。優良誤認表示・有利誤認表示には「100万円以下の罰金」の直罰規定も新設されている(東京海上ディーアールの解説にもとづく)。

食品ECの社内チェック手順

  1. 根拠資料を残す:通常価格で販売していた期間の価格履歴(画面の保存)、割引の対象商品リストを保管する
  2. 期間・条件を表示に明記する:「〇月〇日〜〇月〇日」「〇円以上で送料無料(沖縄・離島を除く)」のように、条件を割引表現のすぐ近くに書く
  3. 全媒体で同じ条件に揃える:モールの商品ページ、自社ECのLP、SNS、動画、広告で、価格・期間・条件が食い違わないかを一覧で確認する
  4. クリエイターの投稿内容を確認する:インフルエンサーやクリエイターが投稿する価格表現も、事業者の表示として責任を問われ得る。PR表記の落とし方は’+a(T[‘stealth-marketing-regulation-influencer’].link,’ステマ規制とインフルエンサー施策’)+’で整理している
  5. 公開前の承認ルールを決める:価格・期間・割引率を含む表示は、担当者とは別の人が根拠資料と照合してから公開する

訳あり品・アウトレットとして割引する場合の表示は、’+a(T[‘discounted-imperfect-food-ec-labeling’].link,’訳あり品販売の表示ポイント’)+’も参照してほしい。

よくある質問

有利誤認表示とは何ですか?

商品・サービスの価格その他の取引条件について、実際のものや競争事業者のものより著しく有利だと一般消費者に誤認させる表示です。景品表示法5条2号で禁止されています。

優良誤認と有利誤認の違いは?

優良誤認は品質・規格などの「内容」を実際より優れていると誤認させる表示(5条1号)、有利誤認は価格・取引条件を実際より有利だと誤認させる表示(5条2号)です。

二重価格表示はすべて違反ですか?

すべてが違反ではありません。比較対象の通常価格が実際に販売されていた価格であれば問題になりにくく、実態のない価格との比較が有利誤認に当たり得ます。判断の目安は二重価格表示の記事で解説しています。

課徴金はいくらになりますか?

対象期間(最長3年)の対象商品の売上額に3%を掛けた額が基準です。たとえば売上額1億円なら300万円です。算定額が150万円未満の場合は納付命令の対象外とされています(2016年の制度導入時の解説にもとづく)。

罰則はありますか?

2024年10月施行の改正景品表示法で、優良誤認表示・有利誤認表示に対する直罰規定(100万円以下の罰金)が新設されています。措置命令や課徴金とは別の枠組みです。

小規模なネットショップでも対象になりますか?

景品表示法は事業者が行う表示を対象としており、規模の大小で適用が分かれるものではありません。ただし、課徴金は算定額が150万円未満なら納付命令の対象外といった基準があります。個別の判断は専門家にご確認ください。

まとめ

  • 有利誤認は価格・取引条件の誤認表示(景品表示法5条2号)、優良誤認は品質・内容の誤認表示(同5条1号)
  • 通常価格・期間限定・最大〇〇%OFF・送料無料・限定表示は、表示と実態がずれると問題になり得る
  • 課徴金は対象期間の売上額の3%が基準(売上額1億円なら300万円)、2024年10月施行の改正で直罰(100万円以下の罰金)と確約手続も加わった
  • 根拠資料の保管、条件の明記、全媒体の統一、クリエイター投稿の確認、公開前の第三者チェックを社内手順にする

モール・SNS・動画をまたいだ価格表示の運用ルール整備を含む相談は、モール横断のEC運営代行サービスから受け付けている。

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出典

※課徴金の算定率・150万円の基準は2016年の制度導入時の解説にもとづく。直罰規定・確約手続は2024年10月施行の改正の解説にもとづく。最新の条文・運用は消費者庁の公表情報で確認してほしい。本記事は法的助言ではなく、個別の表示の可否は弁護士や消費者庁などの専門家にご確認ください。

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