米トレーサビリティ法は、米穀等の流通経路を事後に追跡できるようにするため、取引記録の作成・保存と、産地情報を取引先や消費者に伝達することを事業者に義務づける法律です。米穀そのものだけでなく、米粉・もち・米菓・清酒など米を原料とする加工品も対象に含まれるため、食品ECで米加工品を扱う事業者は、知らないうちに対象事業者になっているケースがあります。本記事では、制度の概要と、食品EC事業者が実務で押さえるべきポイントを整理します。
若松 友貴
一橋大学商学部卒業後、2014年に楽天株式会社へ入社し、楽天市場ECコンサルタントとして累計1,000社超を担当。2017年に食品EC特化の実行型コンサルティング会社GastroduceJapan株式会社を設立。現在はTikTok Shop公認パートナー(TSP)として60店舗以上を支援し、支援店舗群の月間流通総額は3.5億円を超える(2026年6月時点)。食品カテゴリー初のTikTok Shop「松屋フーズデー」の企画・運営や、「TikTok上半期トレンド大賞2026」ヒットアイテム部門受賞商品の支援を手がけ、2025年にはTikTok食品カテゴリ日商ランキング上位10商品のうち6商品を支援ブランドが占めた。日経MJ一面トップにも掲載。
米トレーサビリティ法の概要と目的
正式名称は「米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律」です。事故米穀の不正転売問題を背景に制定され、米穀等に関する取引の記録を整備することで、万一の際に流通ルートを速やかに特定できるようにすることを目的としています。義務は大きく2段階で施行されており、取引記録の作成・保存義務は平成22年10月1日から、産地情報の伝達義務は平成23年7月1日から、それぞれ開始されています。
対象となる事業者・対象品目
対象となるのは、米穀等を取り扱う生産者、製造業者、卸売業者、小売業者、外食業者などです。対象品目には、米穀そのものに加えて、米粉、米菓生地、もち、だんご、米飯類、米菓、米こうじ、清酒、単式蒸留しょうちゅう、みりんなど、米を原材料とする加工品が広く含まれます。食品ECで米菓やもち、甘酒・みりんなどの米加工品を販売している場合、自社が対象事業者に該当していないか、取扱品目を一度棚卸しして確認することをおすすめします。
なお、インターネット通販を行う事業者が条文上の「小売業者」にそのまま該当するかどうかは、参照した自治体ページでは明記が確認できませんでした。実店舗の小売業者と同様に消費者に米穀等を販売する以上、該当する可能性が高いと考えられますが、この点は【推測】であり、個別の該当性は農林水産省の窓口や専門家に確認することをおすすめします。
事業者に課される2つの義務
米トレーサビリティ法が課す義務は、大きく分けて次の2つです。
(1)取引等の記録の作成・保存
米穀等を譲り受け、または譲り渡した際に、品名・産地・数量・年月日(搬入・搬出した日)・取引先名・搬出入の場所(取引先住所と異なる場合)を記録し、原則3年間保存することが求められます。記録は紙媒体・電子媒体のいずれでも構いません。
(2)産地情報の伝達
取引先や一般消費者に対して、取り扱う米穀等の産地情報を伝達することが義務づけられています。食品ECの場合、商品ページの表示が消費者への産地情報伝達の主要な手段となるため、商品名・商品説明・規約ページのどこかで産地情報を確実に伝える設計が必要です。
食品EC事業者が特に注意すべきポイント
食品ECでは次の点が実務上の論点になりやすい領域です。
1点目は、OEMやPB(プライベートブランド)商品です。製造を外部委託している場合でも、販売者として産地情報を把握し、消費者に伝達する責任は基本的に販売事業者側に残ります。委託先から産地情報を確実に受け取れる契約・運用になっているかを確認してください。
2点目は、セット商品・詰め合わせです。複数の産地の米加工品を組み合わせて販売する場合、商品ページ上でどの構成品がどの産地かを消費者が誤認しないように表示する必要があります。
3点目は、モールの商品ページ仕様です。楽天・Amazon・Yahoo!ショッピング・TikTok Shopそれぞれで商品説明欄の表示仕様や文字数制限が異なるため、産地情報を省略せざるを得ない設計になっていないか、モールごとに確認することをおすすめします。
対応を怠った場合のリスク
産地情報の伝達義務(法第8条第1項)に違反した場合、行政からの勧告・公表の対象となり得ることが、自治体の案内資料で確認できます。具体的な罰則(過料・罰金等)の金額については、今回参照した公的情報の範囲では明記を確認できませんでした。対応の要否や詳細は、農林水産省の窓口または専門家に確認のうえ判断することをおすすめします。
実務対応チェックリスト
最後に、食品EC事業者が確認しておきたいポイントを整理します。
・自社の取扱商品に米穀・米加工品(米粉、もち、米菓、清酒、みりん等)が含まれていないか
・該当する場合、仕入れ・販売の記録(品名・産地・数量・年月日・取引先・搬出入場所)を残せているか
・商品ページに産地情報を明記できているか(セット商品は構成品ごとの産地も含めて)
・OEM委託先から産地情報を継続的に受け取れる体制になっているか
まとめ
米トレーサビリティ法は、米穀だけでなく米加工品も対象に含む、食品EC事業者にとって見落とされがちな法令です。対象品目を扱う場合は、取引記録の保存体制と、商品ページでの産地情報の明記を、まず自社の現状点検から始めることをおすすめします。
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出典
よくある質問
Q1. 米トレーサビリティ法の対象は米穀そのものだけですか?
A. いいえ。米穀そのものに加え、米粉、米菓生地、もち、だんご、米飯類、米菓、米こうじ、清酒、単式蒸留しょうちゅう、みりんなど、米を原材料とする加工品も対象品目に含まれます。
Q2. いつから施行されていますか?
A. 取引記録の作成・保存義務は平成22年10月1日、産地情報の伝達義務は平成23年7月1日から施行されています。
Q3. ネット通販事業者も対象になりますか?
A. 公的資料では小売業者・卸売業者・外食業者などが対象と明記されていますが、ネット通販事業者が明示的に含まれるかどうかは確認できませんでした。消費者に米穀等を販売する実態がある以上、該当する可能性が高いと考えられます(【推測】)。個別の判断は所管窓口に確認することをおすすめします。
Q4. 記録はどのくらいの期間保存すればよいですか?
A. 原則として3年間の保存が求められます。
Q5. OEMで製造を委託している場合、産地情報の伝達義務は誰が負いますか?
A. 委託先の製造事業者に加えて、消費者に直接販売する事業者側にも、産地情報を正しく伝達する責任が残ると考えられます。委託契約の中で産地情報の受け渡し方法を明確にしておくことが実務上重要です。
Q6. 違反するとどうなりますか?
A. 産地情報の伝達義務違反については、行政からの勧告・公表の対象となり得ることが案内資料で示されています。具体的な罰則の有無・内容は公的機関に確認することをおすすめします。





