食品ロス削減は、国の数値目標が設定された政策課題であると同時に、食品ECにとっては廃棄コストの削減と新たな販売機会の両方につながるテーマです。本記事では最新の食品ロス量の動向と2030年度目標を整理したうえで、食品ECで実践しやすい削減施策と、表示面で注意すべき法令上のポイントをまとめます。
若松 友貴
一橋大学商学部卒業後、2014年に楽天株式会社へ入社し、楽天市場ECコンサルタントとして累計1,000社超を担当。2017年に食品EC特化の実行型コンサルティング会社GastroduceJapan株式会社を設立。現在はTikTok Shop公認パートナー(TSP)として60店舗以上を支援し、支援店舗群の月間流通総額は3.5億円を超える(2026年6月時点)。食品カテゴリー初のTikTok Shop「松屋フーズデー」の企画・運営や、「TikTok上半期トレンド大賞2026」ヒットアイテム部門受賞商品の支援を手がけ、2025年にはTikTok食品カテゴリ日商ランキング上位10商品のうち6商品を支援ブランドが占めた。日経MJ一面トップにも掲載。
食品ロスの最新動向
消費者庁が2026年6月30日に公表した推計によると、2024(令和6)年度の食品ロス量は461万トンで、前年度(464万トン)からほぼ横ばいとなっています。内訳は、事業系食品ロスが237万トン(前年度231万トンから微増)、家庭系食品ロスが224万トン(前年度233万トンから減少)でした。
2030年度削減目標と食品ECに求められる役割
政府は2000年度を基準年として、2030年度までに家庭系食品ロスを50%減(433万トン→216万トン)、事業系食品ロスを60%減(547万トン→219万トン)とする目標を掲げています。事業系の目標は、当初50%減(約273万トン)として設定されていたものを、8年前倒しで達成したため、より高い削減率に引き上げられた経緯があります。
2024年度の実績をもとに単純計算すると、家庭系・事業系いずれも目標までの削減量の9割超を達成した水準にありますが、事業系は前年度から微増に転じており、残りの削減をどう進めるかが課題です(この達成率の算出は本記事独自の試算であり、公式発表の進捗率ではありません)。食品を扱う事業者が多いEC業界にとっても、在庫の廃棄を減らす取り組みは引き続き重要なテーマです。
食品ECで実践しやすい削減施策
食品ロス削減は、売上と両立させる形で取り組むことができます。代表的な施策は次のとおりです。
わけあり品・福袋化
賞味期限が比較的短い商品や、パッケージ変更前の在庫などを、詰め合わせ・福袋形式で割引販売する手法です。商品単体では売り切りにくい在庫を、組み合わせによって「お得感」のある商品に再構成することがポイントです。
需要予測に基づく適正在庫管理
セール時期やモールのキャンペーン時期を踏まえて仕入れ・生産量を調整し、過剰在庫による廃棄ロスを未然に防ぎます。
レビュー・訴求文での納得感の醸成
賞味期限と消費期限の違いや、訳あり品である理由を商品ページで明確に説明することで、購入後の低評価レビューを減らし、リピート購入にもつなげやすくなります。
当社が支援先の運用で確認している例として、乾物・海苔など原価変動の大きい加工食品を扱うある食品D2C店舗では、定価から大きく値引きした詰め合わせ商品を、ポイント施策とあわせて期間限定で展開したところ、数か月の間に月間売上が1.5倍を超える水準まで伸びたケースがあります(店舗名・具体的な金額は非公開情報のため割愛します)。高単価帯の商品と、原価を抑えた商品を組み合わせて詰め合わせを構成する考え方は、他の食品ジャンルでも応用できる可能性があります。
景品表示法・食品表示法上の注意点
わけあり品を値引き販売する際は、二重価格表示(不当な比較対照価格の表示)に該当しないよう注意が必要です。通常価格として表示する金額が、実際にその価格で相当期間販売されていた実績のある価格かどうかを確認してください。また、賞味期限と消費期限は法的な意味が異なるため、商品ページやセット内商品の説明で両者を混同しないよう明記することが重要です。
利益への影響を試算する
わけあり品や詰め合わせ商品は、通常価格よりも値引いて販売するため、送料・手数料を含めた原価構造を事前に試算しておくことが欠かせません。値引き幅と送料・モール手数料を踏まえた損益分岐を確認したい場合は、食品EC利益シミュレーターもあわせてご活用ください。
まとめ
食品ロス削減は、国の削減目標が着実に進捗する一方、事業系ではここ最近微増に転じるなど、取り組みの継続が求められている領域です。食品ECにとっては、わけあり品の商品設計や在庫の適正化が、廃棄コストの削減と売上機会の両方につながる実践的なテーマといえます。表示面の法令順守とあわせて、無理のない範囲から取り組むことをおすすめします。
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出典
よくある質問
Q1. 日本の食品ロス量はどのくらいですか?
A. 消費者庁の推計によると、2024年度の食品ロス量は461万トンで、事業系が237万トン、家庭系が224万トンです。
Q2. 2030年度の削減目標はどうなっていますか?
A. 2000年度比で、家庭系は50%減(216万トン)、事業系は60%減(219万トン)が目標です。事業系はもともと50%減目標でしたが、前倒しで達成したため引き上げられました。
Q3. 食品ECで取り組みやすい食品ロス削減策は何ですか?
A. わけあり品の詰め合わせ・福袋化、需要予測に基づく適正在庫管理、賞味期限・消費期限の違いを明記した訴求などが代表的です。
Q4. わけあり品を値引き販売する際の注意点はありますか?
A. 通常価格との比較表示が不当な二重価格表示にならないよう、比較対照価格の根拠を確認する必要があります。
Q5. 詰め合わせ商品で売上が伸びた事例はありますか?
A. 当社が支援先の運用で確認している例として、乾物・海苔などを扱うある店舗で、値引きした詰め合わせとポイント施策を組み合わせたところ、数か月で月間売上が1.5倍を超えた例があります(店舗名は非公開)。
Q6. 食品ロス削減は利益にどう影響しますか?
A. 値引き販売は単価を下げる一方、廃棄コストの削減と新規購入の獲得につながります。送料・手数料を踏まえた損益分岐の試算には、食品EC利益シミュレーターの活用をおすすめします。





