冷凍食品は、食品ECの中でも「売れるのに利益が残らない」が起こりやすいカテゴリです。理由は単純で、1件あたりの固定費が常温より高いからです。クール料金、保冷材、箱のサイズ制限。この3つが価格設計を縛ります。
この記事では、冷凍食品をネット販売するために必要な許可の考え方と、クール便の仕様・料金、そして送料負けしないための計算の順番を整理します。
結論
冷凍食品のネット販売は、「許可」と「送料」を先に固めてから商品を作るのが正しい順番です。
許可は「自分が何をするか」で決まります。他社製造の包装済み商品を売るだけなら届出で足りるケースがあり、自社で冷凍加工するなら製造業の許可が関係します。送料は、クール便に120サイズ(120cmまたは15kgまで)という上限があることが商品設計そのものを縛ります。箱を決めてから単価を決める、という順番になります。
1. 許可は「何をするか」で変わる
令和3年6月1日施行の改正食品衛生法により、営業許可業種は32業種に再編され、あわせて営業届出制度が創設されました。冷凍食品に関係する区分を整理すると次のようになります。
| やろうとしていること | 関係する区分 | 考え方 |
|---|---|---|
| 他社が製造した包装済みの冷凍食品を仕入れて販売する | 営業届出(品目により異なる) | 包装済み食品のみの販売は届出業種として整理されている例がある。未包装で扱う食肉販売業・魚介類販売業などは許可業種 |
| 自社でそうざい等を製造し、その冷凍品を作る | 冷凍食品製造業(許可) | 徳島保健所の整理では第27号「そうざい製造業に係る食品を製造し、その製造された食品の冷凍品を製造する営業」 |
| HACCP衛生管理下で冷凍食品製造業と食肉処理業等を併せて行う | 複合型冷凍食品製造業(許可) | 第28号の複合型として整理されている |
| 冷凍・冷蔵での保管を業として行う | 食品の冷凍又は冷蔵業(許可) | 運搬業・貯蔵業は届出不要とされる一方、食品の冷凍・冷蔵業は除外され許可対象と整理されている |
加えて、公衆衛生に与える影響が少ない営業を行う方以外のすべての食品関連事業者は、HACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の設置が義務化されています。製造を伴う場合は特に必須です。
営業の区分判定は、最終的に管轄の保健所が行います。自治体の公表資料にも「ここに記載する以外にも解釈等があります」と明記されているとおり、同じ事業内容でも扱いが分かれることがあります。冷凍設備の設置や商品化の設計に入る前に、管轄保健所に事業内容を持ち込んで確認してください。
2. クール便の仕様が商品設計を縛る
ヤマト運輸のクール宅急便の場合、公式サイトに記載されている仕様は次のとおりです。
| 項目 | 冷蔵タイプ | 冷凍タイプ |
|---|---|---|
| 温度帯 | 0〜10℃ | -15℃ |
| 必要な予冷時間 | 6時間以上 | 12時間以上 |
| 対応サイズ | 60・80・100・120サイズ。120サイズ(大きさ120cmまたは重さ15kgまで)を超える荷物は取り扱いなし | |
| クール料金(税込・基本運賃に加算) | 60サイズ275円/80サイズ330円/100サイズ440円/120サイズ715円 | |
| 取り扱えないもの | アイスクリームなど、冷凍タイプが提供する温度帯より低い温度での管理が必要な商品 | |
| 責任限度額 | 荷物1個につき30万円(税込)まで | |
設計上、効いてくるのは120サイズという天井です。常温便であれば160サイズ以上のまとめ買いセットが組めますが、冷凍便では箱が先に頭を打ちます。「大容量で客単価を上げる」という定石が、冷凍では途中で使えなくなるということです。
もうひとつは予冷時間です。冷凍タイプは12時間以上の予冷が必要とされているため、受注から出荷までのリードタイムに影響します。受注即日出荷を前提にするなら、常時在庫を冷凍状態で持っておく運用が必要になります。
3. 「送料負け」を防ぐ計算の順番
冷凍食品の価格は、商品から決めるとほぼ失敗します。次の順番で逆算してください。
- 箱を決める:60/80/100/120のどれに収まるか。120を超える構成は成立しない
- 1件あたりの配送原価を出す:基本運賃+クール料金+箱・緩衝材+保冷材+ドライアイス
- モール側のコストを乗せる:販売手数料、決済手数料、ポイント原資、アフィリエイト報酬など
- 残った額で商品原価と粗利が成立する単価を出す
- その単価で買われる商品構成になっているかを確認する(ここで初めて商品の話に戻る)
数式にすると次のとおりです。自社の数字を入れて検算してください。
1件あたり粗利 = 販売価格 −(商品原価 + 基本運賃 + クール料金 + 梱包・保冷資材費)−(販売価格 × モール関連コスト率)
たとえば80サイズの冷凍便で、クール料金330円、梱包・保冷資材を150円、モール関連コスト率を合計15%と仮定すると、基本運賃をA円として、販売価格Pに対する粗利は「P −(商品原価 + A + 480)− 0.15P」になります。この式に自社の基本運賃Aを入れた瞬間に、成立しない単価帯が見えるのがポイントです。低単価の冷凍商品が上位に出てこないのは、この式が成立しないからです。
手数料率そのものはモール・プラン・カテゴリによって異なり、改定もあります。各モールの公式な出店案内で最新の料率を確認したうえで式に入れてください。モールごとの向き不向きは食品ECモールの選び方で整理しています。
4. 冷凍食品の売れ方について、当社が確認している傾向
ここからは公的統計ではなく、当社がTikTok Shopの食品カテゴリを分析した範囲で確認している傾向です(2026年2月時点)。判断の出発点としてお使いください。
- 価格帯:売上上位商品の約54%が5,001〜10,000円に集中。1,000円以下の低単価商品は上位に入りにくい
- まとめ買い前提:単品ではなくセット・詰め合わせ・福袋の形が上位に多い
- 送料無料が実質の標準:上位商品のほとんどが送料無料を掲出しており、購入のハードルを下げる前提条件になっている
- 「冷凍」自体が訴求になる:保存が効き調理が簡単という時短・ストック需要を、商品名の「冷凍」が拾っている(上位商品の約63%に出現)
- 評価が土台:売上上位商品の大半が評価4.5以上。信頼が売上の前提になっている
この傾向と前節の計算式を重ねると、冷凍の設計は「送料を吸収できる単価まで上げつつ、箱の上限に収まるセットを作る」という一点に集約されます。当社では冷凍便の柱商品を6,000円前後に寄せる設計を基本にしていますが、これは割引の見せ方と配送原価の両方が成立しやすい帯だからです。逆に、高単価の冷凍ギフトは配送原価を吸収できても拡散しにくく、当社では慎重に扱っています。
5. 商品ページ側の注意点
冷凍食品は、保存方法と期限の情報が購入判断に直接関わります。ECサイト上の表示は食品表示基準の義務対象ではありませんが、消費者庁はインターネット販売での情報提供について、アレルギー・保存方法・期限を優先度の高い事項として整理しています。詳しくは食品ECの商品ページと食品表示で解説しています。
価格の見せ方についても、セールと通常価格の関係には景品表示法上の線引きがあります。あわせて食品ECの二重価格表示もご確認ください。
まとめ
冷凍食品のネット販売は、商品の魅力よりも先に許可と物流の制約が事業の形を決めるカテゴリです。
- 許可は「販売だけか、製造するか、保管するか」で変わる。判定は保健所に持ち込む
- クール便には120サイズ・15kgの上限がある。箱を決めてから単価を決める
- クール料金・保冷資材・予冷時間という常温にはない固定費を、価格に織り込む
- 低単価では式が成立しない。送料を吸収できる単価まで上げるのが前提
冷凍商材の価格設計と拡散設計をあわせて見直したい場合は、EC運営代行やTikTok Shop運用支援もご覧ください。
よくある質問
仕入れた冷凍食品をネットで販売するだけでも営業許可は必要ですか?
何をするかで変わります。他社が製造した包装済みの冷凍食品をそのまま販売するだけであれば、許可ではなく営業届出で足りるケースがあります。一方、自社で冷凍加工して製品にする場合は冷凍食品製造業などの営業許可が、冷凍・冷蔵での保管を業として行う場合は食品の冷凍又は冷蔵業の許可が関係します。業種の判定は保健所が行うため、着手前に管轄の保健所へ確認してください。
冷凍食品のネット販売にHACCPは必要ですか?
改正食品衛生法により、公衆衛生に与える影響が少ない営業を行う方以外のすべての食品関連事業者は、HACCPに沿った衛生管理と食品衛生責任者の設置が義務化されています。製造を伴う場合は特に必須です。自社が対象になるか、どの区分になるかは管轄の保健所にご確認ください。
クール便で送れる荷物の大きさに上限はありますか?
あります。ヤマト運輸のクール宅急便は60・80・100・120サイズが対象で、120サイズ(大きさ120cmまたは重さ15kgまで)を超える荷物は取り扱いがありません。常温便では送れる大きさでも冷凍便では送れないため、まとめ買いセットを設計するときは箱のサイズと重量を先に決める必要があります。
クール便の追加料金はいくらですか?
ヤマト運輸のクール宅急便の場合、基本運賃に加算されるクール料金は税込で60サイズ275円、80サイズ330円、100サイズ440円、120サイズ715円です(同社公式サイトの記載)。基本運賃は発着地やサイズ、契約条件で変わるため、合計額は自社の運賃表で計算してください。料金は改定されることがあるので、必ず最新の公式情報をご確認ください。
アイスクリームもクール便で送れますか?
ヤマト運輸のクール宅急便では、アイスクリームなど冷凍タイプが提供する温度帯より低い温度での管理が必要な商品は取り扱いできないとされています。より低温の温度帯が必要な商材は、対応可能な配送手段を個別に確保する必要があります。
冷凍食品は何円くらいの価格帯で設計すべきですか?
当社がTikTok Shopの食品カテゴリを分析した範囲では、売上上位商品の約54%が5,001〜10,000円の価格帯に集中し、1,000円以下の低単価商品は上位に入りにくい傾向でした(2026年2月時点)。冷凍便は1件あたりの固定費が常温より高く、低単価では送料を吸収できないためです。ただしこれは当社が運用で確認している傾向であり、公的な統計ではありません。自社の運賃・原価で必ず検算してください。
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出典
- ヤマト運輸「クール宅急便」
- 徳島保健所「〔食品関係〕営業許可業種(32業種)(令和3年6月1日以降)」
- 江東区「食品衛生法の改正に伴う営業許可・営業届出について」
- 消費者庁「インターネット販売における食品表示の情報提供に関するガイドブックについて」(令和4年6月)(PDF)
価格帯・セット構成・評価に関する記述は、当社がTikTok Shopの食品カテゴリの分析と運用で確認している傾向(2026年2月時点)であり、公的に検証された統計ではありません。配送料金・営業許可の区分・手数料はいずれも改定や自治体ごとの解釈差があるため、実務では各配送会社の公式料金表、管轄保健所、および各モールの公式な出店案内で最新の情報をご確認ください。





