3分の1ルールとは、賞味期間(製造日から賞味期限まで)の3分の1以内に小売店舗へ納品する商慣習のこと(農林水産省)。法律ではなく取引上の慣例で、期限内に納品できなかった商品は、賞味期限まで日数が残っていても廃棄される可能性がある。
食品ロスの要因の1つとして国が見直しを呼びかけており、納品期限を緩和する小売事業者は2022年10月の240事業者から、2024年10月末には339事業者に増えた。この記事では、納品期限の計算方法、見直しの動きを示す公表数値、卸・小売と取引する食品メーカーや食品ECが確認しておくポイントを整理する。
若松 友貴
一橋大学商学部卒業後、2014年に楽天株式会社へ入社し、楽天市場ECコンサルタントとして累計1,000社超を担当。2017年に食品EC特化の実行型コンサルティング会社Gastroduce Japan株式会社を設立。現在はTikTok Shop公認パートナー(TSP)として60店舗以上を支援し、支援店舗群の月間流通総額は3.5億円を超える(2026年6月時点)。食品カテゴリー初のTikTok Shop「松屋フーズデー」の企画・運営や、「TikTok上半期トレンド大賞2026」ヒットアイテム部門受賞商品の支援を手がけ、2025年にはTikTok食品カテゴリ日商ランキング上位10商品のうち6商品を支援ブランドが占めた。日経MJ一面トップにも掲載。
3分の1ルールの仕組みと計算方法
納品期限は「賞味期間 ÷ 3」で決まる。業界では、賞味期間の3分の2を販売期限とする運用とセットで説明されることが多い(農林水産省の公表ページで確認できるのは納品期限の定義のみ。販売期限は一般的な業界の説明で、取引先により異なる)。
| 賞味期間 | 納品期限(製造日から) | 販売期限の目安(製造日から) |
|---|---|---|
| 90日 | 30日 | 60日 |
| 120日 | 40日 | 80日 |
| 180日 | 60日 | 120日 |
| 360日 | 120日 | 240日 |
賞味期間180日の商品が製造から61日目に倉庫へ到着した場合、納品期限(60日)を1日超えるだけで受け入れられない可能性がある。このとき賞味期限まで119日(賞味期間の約66%)が残っているにもかかわらず、返品・廃棄の対象になり得る。
見直しの動き|農林水産省が公表する取組事業者数
農林水産省は2012年度(平成24年度)に商慣習検討ワーキングチームを設置し、納品期限の緩和、賞味期限表示の大括り化(日付表示から年月表示など)、賞味期限の延長に取り組む事業者を公表している。
| 取組 | 2022年10月 | 2023年10月末 | 2024年10月末 |
|---|---|---|---|
| 納品期限の緩和(食品小売事業者) | 240 | 297 | 339 |
| 賞味期限表示の大括り化(食品製造事業者) | 267 | 318 | 350 |
| 賞味期限の延長(食品製造事業者) | 182 | 269 | 359 |
納品期限を緩和する小売事業者は、2022年10月から2024年10月末までに99事業者増え、増加率は約41%(99 ÷ 240)。なお、2025年度以降の最新値は、農林水産省の公表ページで確認してほしい(今回は取得できなかったため掲載していない)。
食品メーカー・食品ECが確認するポイント
1. 取引先ごとの納品条件を確認する
卸・小売・ベンダー取引がある場合は、取引先ごとに納品期限の設定が異なる。納品期限を緩和している小売事業者もあるため、契約や取引条件で「製造から何日以内」「賞味期限の残りが何割以上」を確認しておく。Amazonのベンダー取引などの扱いは’+a(T[‘amazon-vendor-central-food-maker’].link,’Amazonベンダーセントラルとは’)+’も参照してほしい。
2. 賞味期限を延ばせると、納品期限も延びる
賞味期間が180日から240日に延びると、3分の1ルールの納品期限は60日から80日になり、20日分の余裕が生まれる。製造ロットの出荷調整や、物流の遅れの吸収に使える日数が増える。ただし期限の延長には、保存試験などによる科学的な根拠が必要になる(’+a(N.A.link,’賞味期限と消費期限の違い’)+’)。
3. 日付表示の大括り化を検討する
賞味期限が3か月を超える商品は「年月」表示にできる。日付単位で管理するより、ロット管理や在庫の引き当てがしやすくなる場合がある。表示の条件は’+a(T[‘expiration-date-labeling-rule-food’].link,’賞味期限表示のルール’)+’で整理している。
4. 自社ECの出荷基準は別に決める
3分の1ルールは小売店舗への納品に関する商慣習で、消費者向けのEC出荷にそのまま適用される決まりではない。自社ECでは、配送日数とお客様が食べ切る猶予を踏まえた「出荷可能な最低残存日数」を自社で定める(計算例は’+a(N.A.link,’賞味期限と消費期限の違い’)+’)。
3分の1ルールが食品ロスにつながる理由
納品期限を過ぎた商品は、賞味期限までの日数が残っていても店頭に並ばない。この状態が積み重なると、製造側では返品・廃棄、卸では在庫の滞留が発生する。食品ロス全体の取り組みは’+a(T[‘food-loss-reduction-food-ec’].link,’食品ロス削減を食品ECで進める方法’)+’で扱っている。
よくある質問
3分の1ルールとは何ですか?
賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例のことです。農林水産省は、この期限内に納品できなかった商品が、賞味期限まで日数が残っていても廃棄される可能性があると説明しています。
3分の1ルールは法律で決まっていますか?
法律ではなく、サプライチェーンにおける商慣習(慣例)です。納品期限の長さは取引先によって異なり、緩和している小売事業者もあります。
販売期限も決まっていますか?
業界では、賞味期間の3分の2を販売期限とする運用が一般的に説明されます。ただし農林水産省の公表ページで確認できるのは納品期限の定義で、販売期限は取引先ごとの運用です。
納品期限を緩和する小売事業者は増えていますか?
農林水産省の公表では、納品期限を緩和(または予定)している食品小売事業者は、2022年10月の240事業者から、2023年10月末に297事業者、2024年10月末に339事業者へ増えています。
食品ECにも3分の1ルールは適用されますか?
3分の1ルールは小売店舗への納品に関する商慣習で、消費者向けEC出荷にそのまま適用される決まりではありません。自社ECでは、配送日数とお客様の猶予を踏まえた出荷基準を自社で決めます。
賞味期限を延ばすと何が変わりますか?
賞味期間が180日から240日に延びると、3分の1ルールの納品期限は60日から80日になり、20日分の余裕が生まれます。期限の延長には、保存試験などの科学的な根拠が必要です。
まとめ
- 3分の1ルールは、賞味期間の3分の1以内に小売店舗へ納品する商慣習で、法律ではない
- 賞味期間180日なら納品期限は製造日から60日、期限を1日超えるだけで賞味期限が約66%残っていても受け入れられない可能性がある
- 納品期限を緩和する小売事業者は2022年10月の240から2024年10月末の339へ、約41%増えた(農林水産省)
- 自社ECの出荷基準は別に定め、卸・小売との取引では取引先ごとの納品条件を契約で確認する
卸・小売・ECをまたいだ在庫と出荷の設計について、モール横断の運営体制の相談はモール横断のEC運営代行サービスから受け付けている。
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出典
※取組事業者数は農林水産省が公表している各年度10月時点(2022年は参考値)の数字で、公表を希望した事業者の集計。最新の数値は農林水産省の公表ページで確認してほしい。計算例は説明用で、実際の納品条件は取引先との契約による。





